多幸感の海に溺れる -『この素晴らしい世界に祝福を!』
備忘録第2弾。
『転スラ』を読んで「なろう」にハマった私は熱も冷めやらぬうちに、学友に「すごい小説を読んだ」と喧伝していた。好きな作品を他人と共有したがるヲタクの悲しい性なのである。
するとなんということか、私のクラスには「隠れなろうユーザー」が2人潜んでいたのだった。ここでは彼らをAさんBさんと呼称することとする。Aさんはなろう歴3年、Bさんも1年と、かなりの経歴を持っていた。彼らはヘビーユーザーであったのだ。 どうやらお二方も「なろう」に一家言あるようだった。私たちは熱く語り合った。
「挿絵が無いからキャラクター造形を自分の中で想像できる」 「ハーレムは邪道」「いや王道だ」 「脳内イメージの主人公が毎回同じ顔になってしまう」 「髪色で差別化してる」 「悪役転生がキてる」「人外転生も熱い」 「奴隷でてこない異世界ファンタジーなんてあるの?」 「時代は俺yoeee作品」 「ジト目クールな女の子のデレが至高」
なろう初心者の私は中々話についていけなかったが、どの話も新鮮で語らいの時間は非常に楽しかったことを覚えている。そして当然、話題は自分の推し作品に移っていった。 どうやら薦めたい作品は膨大にあるようだったが、彼らの一押しは『無職転生』『このすば』であるらしい。前のめりになり早口で「これを読めこれを読め」と捲し立てられた。
大まかな粗筋を聞いて、私は『このすば』を読んでみることにした。 書籍化に伴いなろうホームページから作品は消去されているらしかったので、彼から縦書きpdfファイルをもらって電子機器で読み始めた。
ということで前書きが長くなってしまったが、web版『この素晴らしい世界に祝福を!』の感想、および作品について雑記していこうと思う。
物語はニートの男がトラックに轢かれ、異世界に転生するところから始まる。 この主人公もテンポ良く成り上がっていくのかなと思いきや。この人、ずっと日雇い労働しているのである。得た給金で駄目女神、町の人達と飲み騒ぎ、その翌日も土方仕事で生活費を稼ぐ。主人公は異世界を謳歌…しているのだろうか。 今思い返しても、ここまでリアルな異世界生活を描いている作品はそうそうない。
その後、彼はアクア、めぐみん、ダクネスの3人の仲間を得て、いろいろ冒険っぽいことをしていく。 あまりの面白さに3章終わりまでぶっ続けで読んでしまったのだが、なんだか3人のヒロインのうち、ダクネスに焦点が当たっている話が多く感じてモヤモヤしていた。すると3章末に「3章はダクネス、4章はめぐみん、5章はアクア」との作者コメントが。
めぐみん信者になっていた私は期待に胸を膨らませ4章を読み始めた。
結論から言うと、これまでの価値観ぶっ壊されるくらいに心揺さぶられる傑作だった。
どうやら爆裂散歩は毎日欠かさず主人公と2人きりで行っているらしい。かわいい。
4章はめぐみんの実家に行く話だ。しかし彼女の様子がおかしい。曰く爆発を制御できなくなったらしい。どうしようもできない主人公たちは、実家への道を急いだ。
発熱に苦しみながらも健気に仲間を気遣いつつ懸命に歩を進めるめぐみん。情が移らないわけがない。この時点で私は完全に彼女に惚れていた。 極限状態の吊り橋効果で主人公と仲を深めあっていく二人。そして無事に村に到着。
ここからだ。
なんやかんやあり主人公と床につくめぐみん。 3章ダクネスでも同じようなよくあるサービスシーンみたいなのがあったので「まあ主人公が調子に乗ってめぐみんが怒って有耶無耶で終わるんだろうな~」なんて思ってたら、この二人、布団の中で抱き合いやがった。
「え、マジか」と心臓バクバクで読み進める。めぐみんは主人公に好意を抱いていたらしかった。彼女は主人公へ、これまでの感謝の言葉を告げる。使えない私を仲間に入れてくれてありがとうと。ここで入る過去回想で感極まって私はボロボロと涙を流した。 そして主人公に口づけを求めるめぐみん。攻め手めぐみんの破壊力がとんでもない。 脳内の幸せゲージは時すでに振り切れている。
とここで邪魔が入り2人は離れ離れに。ああ、このまま曖昧で中途半端な関係のまま終わるのかなと落胆していたら、なんと主人公が男を見せて彼女の元に舞い戻り、告白したのだ。告白までの主人公の葛藤からのめぐみんの返事までの描写が本当に最高だった。
私は多幸感の海に溺れた。
こういう複数ヒロインで特定のヒロインと付き合う作品を読むのは初めてだったので、それはもう感動した。こういう作品他にないのかなあ。1年間なろうを読んできたけど未だ出会えていない。
そして4章ラストシーン、森の奥での二人の一幕。 4章序盤からの伏線、展開、軌跡が全て集約された、最高のカタルシスであった。
めぐみんは最高。
以上。ネタバレ防止のため結構ボカして書いたので意味不明なところがあるかも。web版『このすば』はマジで名作なのでどこかから見つけて是非読んでほしい。書籍版『このすば』とはほぼ別の物語になっているのだ。
こうして私の中でのweb小説の捉え方は大きく塗り替えられた。