とにかく構成が凄すぎる -『この世界がゲームだと俺だけが知っている!』
備忘録第3弾。
『転スラ』『このすば』を経た私は、公式ランキングや有志のオススメ記事を漁って、新規開拓に勤しんでいた。友人Aに勧められた『無職転生』も気になってはいたが、初期のうちからトップ1位の作品を読んでしまうとそれ以降読むほかの作品が霞んでしまうのでは…という思いから、この作品はしばらく寝かせておくことにした。文章量がクソ多くて尻込みしたというのもある。
今回感想を書いていくのは『この世界がゲームだと俺だけが知っている!』。 とにかくストーリーの構成が凄いと評判だったのが手に取った理由である。
結論から言うと、とんでもなく凄かった。
この作品の魅力である『伏線回収』が鮮やかすぎる。
世界観についての情報が明らかになっていくにつれ、小さい伏線が次々に回収されていく。それと並行して伏線が至る所に散りばめられていく。そして最後の最後にドカーンと大きい伏線が回収される。これが読んでいて本当に楽しい。
物語は主人公がゲームの中に転移してしまうところから始まる。そのゲームが至る所バグだらけのとんでも世界であった。しかし、主人公は世界のバグを上手く利用しつつ、ゲームを攻略していく。
『松明(100LV)でスキルレベル上げ』 『ノックバックを利用して空中飛行』 『本来1つまでの指輪を10本装備して身体強化』..etc
このくだらないバグ技の数々を懇切丁寧に詳しく説明してくれるのも楽しい。 ネトゲ経験者なら「あ~こんなバグありそう」となること請け合いだ。
もちろんゲームの中の人物たちは「自分達がゲームのキャラクター」だとは微塵も思っていない。そこで生まれる、メタ視点を持つ主人公とゲーム内キャラクターたちの『ギャップ』が面白い。
そしてこの作品のもう1つの魅力、それは『ヒロインが可愛い』ことである。 ぼっち冒険者のイーナ、世間知らずお姫様のリンゴ、猫耳ライバルキャラのミツキ。この初期3人のヒロインは本当みんな可愛かった。
最初らへんはとにかくリンゴが好きだった。無口ながらもトテトテと主人公の後を追う姿がかわいすぎる。個人的に彼女の特に好きなシーンは、魔王討伐のため主人公に様々なバグ技を教わり、嬉々としてバグ技を利用してはしゃいでるところ。メモ帳の「すき」とか主人公が他のヒロインを命懸けで助けるシーンでの悲しげな表情とかも良い。
中盤以降のミツキも良かった。猫耳コミュニケーションほんとすき。
そしてこの作品の核はやはり第2章『永遠のイーナ』だろう。 主人公の絶望、逡巡からの「プロポーズ」のカタルシスは半端なかった。
見事としかいいようがない構成、鮮やかな伏線回収の妙。
ただ、3章以降は2段階くらい質が下がったように感じた。ストーリーは十分面白いのだが、なにやらヒロイン枠がかなり増えてしまったのだ。 初期の3人だけならまだしも、そこからさらに3人のヒロインを追加するのは...。やはり後釜と比べると感情移入度は全然違うし、初期ヒロインとの絡みも相対的に減っていくのはやはりモヤモヤする。
どうやら私は過度な『ハーレム展開』が苦手らしかった。
顰蹙を買うこと覚悟で言ってしまうと、私は主人公の現世での幼馴染ポジであるマキというキャラが嫌いだった。なぜ嫌いなのかは自分でもよく分かっていないのだが、台詞の節々から「こいつは私がいないとダメなんだから」みたいな感情が伝わってくるのが鬱陶しかったのかもしれない。キャラ付けのためか知らないが妙に語尾を伸ばした喋り方にも辟易とせざるを得なかった。
そして何より不幸なことに、作者さんはこのキャラが推しヒロインであるようで、話のあちらこちらで何かと出しゃばってくるのだ。主人公も唯一の現世と繋がりのあるキャラだからか序盤からのヒロインを蔑ろにして、彼女を何かと優遇する…。
こういったシーンの積み重ねで、いつしか主人公との壁ができてしまったのかもしれない。こんなモヤモヤした感じで私は3章以降を読み進めた。主人公への感情移入はあまりできなくなったが、しかし物語は面白く、楽しんで読めたと思う。
この物語を読んで得た教訓の一つは『自分に合わないヒロインが一人でもいたら、作品への熱中度は数段階下がってしまう』ということだ。以降私はこの法則に何度となく苦しめられることとなる…。