絶望が蔓延る世界で -『成人すると塩になる世界で生き残る話』
なろう備忘録第26弾。 『成人すると塩になる世界で生き残る話』
ある夏の日、成人は肉体が塩になって死ぬ世界に一変した。 未成年者しか生きられない世界の社会機能は容易く麻痺し、町では不良共が欲望のままに暴れ回る。そんな中、一人の少年は盲目の少女と共に、異常な世界で静かなる追跡戦を開始した。
作中の雰囲気はパニック+ダーク。全編通して緊迫感があり、ページを捲るのが止まらない。登場人物の心理描写が卓越している。冗談抜きに面白かったです。
特にダブルヒロインの造形が最高に良かった。底なしに優しい初心な盲目少女と、闇を抱えた依存癖の強いポニテ少女。パニックな世界観なので『依存』というワードは結構作中で浮き彫りになっています。ただ、一方的な依存が殆どで共依存のような関係は無い。このあたりの依存の矢印方向もうまいこと組まれていた。
ノクタ枠ですがヒロイン達とのエロ描写は数回のみ。それもストーリーに必要不可欠なモノであり、作品の雰囲気を崩すことなく差し込まれているところに魅力を感じる。ただ、大人が全員塩になり子供しか存在しないという世界なので、勿論法律なんてあってないようなものであり、強姦描写は至る所にある。
正直精神的にかなりキツイ展開もあるが(NTR諸々)それらを踏まえて描かれるストーリーが見事だった。そして主人公の内面描写もまた凄い。葛藤、絶望、発狂、そして彼が最後に辿り着いた答え。
自殺すべきだとは思う。 だが、あと数年で塩になる無残な最期を迎えるのだ。それまでは死の恐怖に怯えるという罰で、罪を誤魔化していけば良い。そして隣席の少女と寄り掛かり合い、溶け合うように、騙し騙し己を支えて生きていく。
この最終話の独白が良かった。文句の付けどころのない〆でした。