恋愛と親愛の線引き -『絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで』
こんばんは。
今回とりあげるのは絶賛連載中の『絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで』。キリの良いところまで読み終えたので備忘録がてら紹介しようかなと。
いやー、大変面白かったです。とにかく的確に読者のツボを押さえた展開が見事でした。正当派な作風でこんなにワクワクさせられたのは久々な気がする。『転生スライム』『無職転生』あたりで感じた純粋なワクワク感を味わいました。
では、なろう備忘録第22弾をば。
まず主人公について。「25時間眠りたい」などと漏らしつつもなんだかんだノリノリでダンジョン開発しちゃう感じが良い。割と居丈高な性格なのも、ダンジョンマスターの風格を感じさせて良いと思います。基本自分の正義に忠実な主人公なので、特に鼻につくことはなかったですね。
悪役転生のお話なので、基本的に人間である冒険者をやっつける話になるのですが、そのへんの倫理観やら云々は上手く描いていると感じました。ごく自然に、かつあまり嫌悪感を抱かないように配慮されて描かれています。
そして、この作品で秀逸だと思ったのがヒロインの描き方。割とたくさん女の子が登場するんですけれども、それぞれに明確な役割を振っているのが見事でした。おそらく主人公に恋愛感情を抱いているのはロクコとニクの2人だけだと思われるのですが、作者さんの中で主人公と恋愛関係で絡ませるのはこのキャラだけ、という線引きが為されているのでしょう。こういう線引きはとても大事だと思う。
他の女の子たちも軒並み主人公に好意を寄せているのは明らかなのですが、それぞれの関係が例えば師弟関係であったり、雇い主と従業員のような関係であることが上手く作用していて、チープなハーレム作品特有の気怠さのようなものが一切ない。最近は『恋愛感情』よりこういう『親愛感情』のようなものに魅力を感じてしまいます。
そして、そんな登場人物たちを丁寧に描いてくれるんだからこの作品は隅に置けないのだ。閑話として時々はさまれる、それぞれのヒロイン視点からの小話が本当に好き。キャラクター愛のようなものがびしびしと伝わってきます。こういう作品は得てしていいものなのである。