神話を科学するとき -『INVISIBLE』
『INVISIBLE』がひと段落ついたので気分転換に感想書きつつ紹介しようかなと記事を書いている次第です。では、なろう備忘録第20弾をば。
しかしこの作品はなんとも説明が難しい。 作品ページの説明ではこのように書かれている。
神秘のベールを脱いだ神々と人々が互いに手を携え、宇宙存亡をかけ創世者INVISIBLEに立ち向かう。神話と伝承、神と魔の存在を科学で暴き出す、終末阻止系SF小説。 人類、文明、科学、生命への讃歌。 人類進化論とテクノロジーが人々にもたらす功罪をテーマに、地球の行く末を描く群像劇です。
どうですか、この闇鍋大娯楽な感じ。一見カオスに思えるが、しかし作品自体はきちんと整合性がとれているのだ。そして膨大な設定群から織り成される物語は、目を離す隙が無い。
( 作者様HPより http://lizreel.web.fc2.com/suuziku1.html )
こういうオリジナル設定にワクワクする方は絶対楽しめると思う。神々が所有する能力やツールが、現代科学で説明できてしまう点も他の作品には無い魅力だろう。理系のSF好きには垂涎モノだと思われる。
しかしこの作品、ヒューマンドラマとして見ても高水準であるのだ。群像劇と謳われる通り、様々な人間、神々、天使達が様々なドラマを描いていく。登場人物はかなり多いが、それぞれが強烈な個性を持っていて混雑することはない。特に格好いい大人がたくさん登場するのが良いです。渋いオヤジとか最高じゃありませんか。
心に残る台詞があった。
「そう、研究者になりたいの。なら、未来の研究者となる藤堂君の最初のテーマは、これを考えることよ。研究者はどんな分野においても、医学、化学、生物学、物理学、文学から考古学に至るまで、たった一つのことを解き明かそうとしているのだから」 「一つのこと?」 「そうよ。たった一つのこと。この世界は、どう在るのか? 世界の姿はどうあるのか、それを暴こうとしているの。藤堂君、諦めないで考えるのよ。神様だってまだ、この謎を解けないでいるに違いないわ」 <第1節 第13話 ウィグナーの友人と闇神、荻号 要の開眼 より>
成程、と腑に落ちた。とても素敵な考え方だと思う。
そして、この一連の台詞がこの作品というものを如実に表していると思うのだ。
人類進化の終着点を描く現代神話風セカイ系SF作品。是非。