なろう最高峰の異世界ファンタジー -『ラピスの心臓』
備忘録第19弾。
今回紹介するのは『ラピスの心臓』という作品。随分久しぶりにまともな小説を取り上げた気がする。さすがにそろそろ王道なストーリーを読みたいと思い、いつか読もうとストックしていたこの作品を手に取った次第です。まず読み終えた時点での感想を書いてしまうと、『今まで読んできたなろう小説の中で1位2位を争うレベルで面白い』作品だった。
そして残念なことにこの作品は更新が1年以上滞っている。しかし筆者さんの活動報告欄に「一時的に更新を休止するが、かならず続きを見ていただけるものを完成させて投稿したい」という旨の記述がある。我々は筆者さんを信じて待つしかないのである。
(2017/5/18:追記) 作者さんの活動報告欄にて復帰の旨が書かれていました。続きが読めると思うと本当に嬉しい。
というわけで連載中の外交編は読まずに小休止編まで読んだ時点での感想を書いていこうと思います。正直な話、アイセ、シトリ、ジェダの3人に同行する外交任務とか心の底から読みたいのだが泣いて馬謖を斬る思いで断念した。完結してから読むんだ...。
さて改めて、本当に最高の小説でした。 たとえるなら俺tueee小説特有の『臭さ』が全くない、限りなく純度が高い俺tueee小説。主人公の人となりや物語の構成がそれを成り立たせているのだと思う。なろうテンプレをひたすら硬派に描いているという感じ。これは真っ向から描かれた異世界ファンタジー作品なのである。
『ラピスの心臓』ではそれぞれのキャラクターがそれはもう『真摯に描かれる』。 そして私たちは彼らに深く感情移入してしまい、ヒロインたちの淡い恋心に、仲間たちの熱い友情に、胸を熱くせざるを得ない。それぞれの登場人物が皆心の中に自分の正義を持っているのが良い。悪印象をあたえるようなヤツが実のところは...みたいな展開が好き。
この作品の核であり、最大の魅力であるのが主人公シュオウ。 12年間の人里離れた修行の末、彼は最強の戦闘力を持つ。そして人の世に出て、まだ見ぬ世界を冒険していく。ちやほやされることを好まないところがクールで好きだし、仲間を本気で守ろうとする彼の熱い感情も好きだ。
達観しているかと思えば、たまに子供っぽいところを見せる。老成と幼さの混在。 ただ知的好奇心の赴くままに世界を旅したかった彼は、軍部に入ることになる。それはすなわち社会に属することを意味し、彼は様々なものに雁字搦めになっていく。一体彼はそこに何を見るのか。
彼について印象に残っている台詞がある。孤児に食べ物を与えるシーンでの言葉。
「わずかな食べ物が、一瞬の餓えを満たすだけにすぎないって事はわかってるんだ。だけど、ほんの少しでも美味しい物が食べられたら、あと一日生きてみようって、小さな希望になるから」 http://ncode.syosetu.com/n4006r/9/
彼のひととなりが如実に表されてた、最高のセリフだと思う。
そしてヒロインもまた王道でみんな可愛い。 心底良い子な金髪ショートのお嬢様に、極度のめんどくさがり甘えたがりな青髪ロングのお嬢様。ただただ弱くわがままで未熟な、薬物中毒だったお姫様。そして王の器を備えた質実剛健・才色兼備な桃色二つ結びの少女。
正直全員それぞれ順位がつけられないほど大好き。こんな作品初めて。複数ヒロインの作品は大体誰かひとりが頭抜けてたり、あんま好みじゃないのがいたりする。
最後に辻読氏のレビューから少し引用させてもらって〆ようと思う。
作者さんは物語作りがすごく巧みだと思います。人が「面白い」と感じられる要素というか、読んでいて誰もが本能的に快感を感じられる何かを心得てる人なんだな、と。 http://novelcom.syosetu.com/novelreview/list/ncode/173989/
なろう最高峰の異世界ファンタジー。是非!