苦労人な上司、頑張る -『人狼への転生、魔王の副官』
備忘録第10弾。
記念すべき10本目の記事に選ばれたのは『人狼への転生、魔王の副官』。ただ単に10番目に読んだだけなのだが、まあ色々と書いていこうと思う。この本を読み始めた動機は特に記憶にないので、おそらく総合ランキング上位から適当に見繕ったのだろう。ふたを開けてみたらとんでもなく上質な悪役転生モノだった訳であるが。
一口に悪役転生といっても特に悪いことをするわけでもない。書籍版の巻末コメントで作者さんは「悪役転生にしたのは、基本的にやりたい放題できるからだ」と述べていた。なるほど確かに好き放題やっている。そういうはっちゃけたストーリーは得てして魅力的である。
全体的な印象としては『経済を活性化させるべく奮闘する話』のように感じる。一応、勇者VS魔王みたいなバトル展開もあるのだが、それは作品のテーマではないように思えた。
そして私がこの作品の一番に好きなところが、主人公と他の登場人物の関係性。
この作品にも一応なろうらしく可愛い女の子が結構出てくるのだが、彼女らは主人公と各々『上司と部下』『師弟』の関係で結ばれている。これが上手いこと作用している。恋愛感情はほとんどないのだが、その関係性はどこか親愛のような温かさがある。
特に大好きな作中の一文がある。
ダメだ、誰かが働いているとみんなで作業してしまう。人狼の、そしてゴモロヴィア門下生の悲しい習性だ。
この文章に私は撃ち抜かれた。この優しさ溢れる世界に溺れていきたい。
全編どこをとっても面白い上質な異世界ファンタジーです。是非。